天皇の謎 1700年続く世界に類例をみない王家の謎

アメノウヅメの舞 高千穂夜神楽 宮崎
アメノウヅメの舞 高千穂夜神楽 宮崎

日本の正史として日本書紀がある。この書は天武天皇が発し奈良時代に持統天皇と藤原不比等によって完成された。したがって当時の権力者の意図に添って編纂されているのは言うまでもない。概略は、天地開闢、国産み、神産み、アマテラスとスサノウ、天の岩戸、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)、ニニギの降臨、初代神武天皇と神話の記述が続く。

 

最近の歴史学や考古学の研究によれば、3世紀頃、各地の部族の連合国家として大王(後の天皇)を抱く大和が成立したらしい。どうも初代の神武天皇とその物語は、実際には後代の崇神天皇や応神天皇の物語と重複して編集されているようだ。記録によれば崇神天皇の世に大変な伝染病が流行したらしい。これを崇神天皇はカミの祟りとして三輪山に出雲神大物主(オオモノヌシ)を祀った。祟りの原因は、大和朝廷が、連合国家の成立に貢献した出雲を裏切ったことらしい。そして出雲系の神功皇后の子、応神天皇を向かい入れた。という仮説があるのだ。

 

つまり当初の政権では、森羅万象のどうすることもできないパワーである「祟り」を封じ込めるためには、カミとつながりのある強い霊的パワーを持つリーダーを必要としたことだ。これが日本独自のリーダー、天皇を抱くことになった理由なのかもしれない。神話では神武天皇は九州から奈良に入り、戦闘では敗退するが、熊野方面へ迂回して霊的な呪術で奈良入りを果たした天皇である。事実は定かではないのだが、この辺りに日本独自の霊的な王制、天皇制の発祥のカラクリがあるに違いない。

 

天皇とは、縄文時代から続く森羅万象に満ちるタマ(=カミ)につながる霊的リーダーであった。現代でも行われている天皇の即位の儀式、大嘗祭(だいじょうさい)では、新しい天皇は天皇霊(タマ)を受け継いでいるのだ。天皇も繁栄や零落の時代を経験してはいるが1700年もの間存続している。このことは、天皇制が成立している基盤が、ただ単に政治的、社会的に成立しているのではなく、もっと本質的な、宇宙、自然、世界の霊的支配者、いわば大自然を支配する「カミの王」と結びつくとともに、怒らせると大変な祟りがあるかもしれない。という霊的パワーを持つ存在と認められているからではないだろうか。

 

神仏オブジェ 住吉大社 大阪