カミと神。八百万のカミとは

 

日本のカミは、人間社会の創造神である。社会の外側から社会に影響を与える存在である。これに対してキリスト教の神は宇宙の創造神である。宇宙の外から全てをコントロールする神である。

 

独自の多神教世界である日本の八百万(やおよろず)のカミは、風や水や岩、樹木などの自然の精霊のたちから始まり、神話や実在のヒト、英雄たちであり、人間の社会に深く影響を及ぼした存在である。人々はそのパワーや祟りを恐れながらも祀ることによりカミの加護と現世利益を得ようとする。そんなカミは、祭の度に、彼岸からやってきて此岸である人里にサチやエネルギーを授けるマレビトでもあった。

八百万の神々は、キリスト教やイスラム教の神とは根本的に異なっている。日本の神社をみると、平安神宮は桓武天皇、明治神宮は明治天皇と実在の天皇であり、北野天満宮は菅原道真、東京の乃木神社は明治に日露戦争で活躍した乃木大将が祀られている。もちろん豊臣秀吉や徳川家康もカミになっている。いわば凄いヤツが祀られている。彼らは大抵、新しい社会を作ったり、社会に大きな影響を与えた英雄たちである。それ故、日本のカミには、独自の物語があり、縁結びであったり、学問成就であったり、病気治癒であったり、そのキャラクターごとに人々は参詣先を選んでいる。おそらく日本のカミは、縄文期のアニミステックな地域や部族に根ざした自然神が、大和朝廷成立後に古事記・日本書紀などの神話成立時に再編成されたものが八百万の神々であったと考えられる。

 

それに対して、一神教の神、例えばキリスト教やイスラム教の原典とされるユダヤ教の旧約聖書では、自然や地域に散在する多様な神々は退けられ唯一絶対の神、Godが登場する。この神は、多神教の神々より抽象度の高いメタレベルの神であったのだ。それゆえに社会を超えた宇宙の創造神であり、かつGod自身が創造した「人間」が担うべき掟を人間に命ずる存在でもあるのだ。

 

この違いが基底文化の違いとして現代の文化・社会・個人にまで深く影響を及ばしている。