トラさんとマレビト

日本のカミは、神社などの常住しているカミと祭や正月などに訪れるたまにやって来るカミがいる。時たま現れるカミとは、民俗学者折口信夫が提唱したマレビトである。マレビトは、祭などにやってきて里の人たちを祝福してパワーを吹き込んでいく。有名なのは沖縄のアカマタ、クロマタや秋田のナマハゲなどだ。突然どこからか異様な姿で現れて人々を驚かす。この出現を里の人々は福をもたらしてくれると信じているのだ。古い時代の社会では、里に暮らす人々と、旅そのものを人生とする人々がいた。里に暮らす人々は主に農業や漁業を営み、旅する人々は、職人、芸人、修験者など宗教者、山での狩猟で生業を立てるマタギ、転々と山を移動しながら木製の食器を作る木地師などの職能民や狩猟民であった。里の人々から見ると、里の外からやってくるものは自分たちに福をもたらしてくれると同時に災いをもたらすかもしれない怖い存在でもあった。もちろん人以外に里にはカミやモノノケ、オニもやってくるのだ。

 

里に住む人々の社会にも、里の周辺に位置する人々もいた。社会そのものから疎外されている老人、病人、部落民や、不良、罪人などである。周辺にいる人々はその存在として此岸と彼岸の間に身を置く存在であった。したがって里の人たちとは違った世界観や価値観を持っていた。渡世人、やくざ者なども社会の一定の役割を果たしていく。現代でもフーテンの寅さんなどが、広く支持され親しまれている。寅さんは現代のマレビトかもしれない。